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介護保険

実際に介護サービス費用を安くするには?

住んでいる地域で介護保険料の金額が変わると言っても、それを理由に引っ越しするというのは現実的な話ではないですよね。であれば、現時点の状況で介護保険に掛かる費用を抑える方法ってないのでしょうか?
要介護状態なのに、介護サービスを使わなかったり利用を控えたりということ以外で、しっかり介護サービスを受けることができて、しかも費用を抑える手段がないのでしょうか?

 

介護サービスを受ける場合の利用料

まず、介護保険料ですが同じ住所地でも所得段階によって、介護保険料が変わってきます。給与所得でいう累進課税、ようは給与が多いほど介護保険料も高くなります。給与がない高齢者は、年金額が所得になりますので年金額が多いほど介護保険料も高くなります。

次に、介護サービスの費用について見てみましょう。要介護者が、介護サービスを利用した場合には、原則1割を自己負担、残り9割が介護保険から給付されるという仕組みなっています。医療保険で言うと、原則3割を自己負担、残り7割が医療保険から給付ということなります。

原則、となっていますが、実際には制度として2割負担、3割負担という場合があります。どのような場合が2割、3割負担になるのでしょうか?
高齢者単身世帯と高齢者夫婦世帯とで要件が変わりますが、高齢者夫婦世帯を例にとってみると、世帯の年間合計所得が346万円未満なら1割負担、463万円未満なら2割負担、それ以上であれば3割負担となります。
例えば、前回のブログでひと月の介護サービス利用料が月8,000円の事例をご紹介しましたが、その方の場合、2割負担であれば月16,000円、3割負担であれば月24,000円と激増します!負担額はモロに2倍、3倍となってきますが、所得自体は、2倍、3倍も増えている訳ではないので、高齢者の家計への影響度は大きいですね。ここで言う年間合計所得には、年金所得以外に株や不動産収入も含まれますので、介護サービスを利用されている要介護高齢者の方は、所得金額や名義については注意が必要ですね(税理士さんやファイナンシャルプランナーさん等にご相談されるのがお勧めです)。

【参考】利用者負担割割合の詳しい判定方法
「利用者負担割合判定の流れ(厚生労働省資料)」(神戸市)
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/6577/30-hutanwariai2_1.pdf

みん
みん
前回の話の後、国の介護保険の他に民間の保険への加入も考えてますよ。
けれども、介護サービスを受けるようになった場合は、実際どれくらいの利用料がかかるものなのですか?
むつ
むつ
介護サービスといっても色々なサービスがあるので、一律いくらとはいえませんが…
所得によって、自己負担1割だったり、2割、3割だったり異なります。
みん
みん
そういえば、この前話したお隣のおばあちゃんですけど、
月8千円でヘルパーさんとデイサービスを受けていたのに、
急に2万4千円へ値上がりしたのですって!3倍も!!
なんでも、年金の足しにしようと敷地をけずって賃貸アパートを建てたらそうなったらしいの。
むつ
むつ
それは想定外だったでしょうね。
サービスの負担割合は、年金所得だけでなく株や不動産収入も含まれるので、負担割合が上がってしまったのですね。
税理士さんやファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがですか?

 

施設サービスを受ける場合の利用料

また、実際に介護サービスを受けている場合で、施設サービスを利用されている場合であれば、食費や居住費(いわゆる家賃相当)の負担限度も所得等によって変わってきます。これら負担限度額も年金収入が要件になりますが、併せて預貯金額も要件になってきます。例えば、負担限度額の要件に当てはまる場合は、年金収入等が年間120万円を超える方であれば、預貯金額が1,500万円以下(夫婦世帯)となります。

【参考】「介護保険施設における負担限度額」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000778218.pdf

みん
みん
お隣のおばあちゃんは自宅で介護サービスを受けてますけど、これが老人ホームなどの居住施設で寝起きするようになったら、もっともっと費用がかかるのでしょうねぇ?
むつ
むつ
そうですね、こちらも様々なタイプの施設があり一律いくらとは言えないのですが…
負担限度額認定という制度があるのですよ。
みん
みん
え?その制度を使えばお得にサービスが受けられるのですか?
むつ
むつ
所得や資産等が一定以下の方であればサービスが受けられます。
負担限度額を超えた居住費と食費の負担額が介護保険から支給されます。

例えば、ご夫婦で年金120万円、預貯金1,500万円であれば、施設に払う料金の上限が設定され、あとは介護保険の方でみてもらえるのですよ。

 

法改正で年間60万円負担増の実話

負担限度額の場合、介護サービス利用料の1割、2割のように違いが分かりにくいですが、負担限度額の要件から外れるとどんな影響になるかというのを試算してみましょう。

実は、ここだけの話、筆者の母が介護老人保健施設(俗にいう老健)に入所しています。要介護2なので、歩行に不安があり、入浴の介助は必要なものの食事や排泄は自分でできるような状態です。
つい先日、負担限度額認定の更新がありました。令和3年度の改正により、令和3年8月からの負担限度額の要件が更新されたため、実はうちの母がその影響を受けることを知りませんでした。今回の改正で単身世帯の預貯金の基準が、改正前の1,000万円から500万円に改正されていました。昨年までは、負担限度額の更新時に「預貯金1,000万円なんて超えるわけないじゃん」と思っていましたが、今年の場合は、要件がいきなり500万円と半額になったため「あ。ちょっと超えている・・・」という状況になっていました。
申請書類には通帳のコピーで残高の証明をするために基準をちょっと超えただけでも負担限度額を適用されなくなります。ということで、若干現金として引き出し通帳上は500万円以下として申請しました。
さて、この効果ですが負担限度額を受けていた場合は、食費と居住費の合計額は月に30,600円でした。負担限度額の適用がなくなると月に81,300円、つまり毎月50,700円の負担増!(激増!)になっているところでした。

預貯金額を少し変えるだけでも、月50,000円以上の負担が変わる場合もあります。介護サービスを利用されている方は、まず年間所得、預貯金額を把握した上で、どの要件に相当しているのかを役所に確認するところから、負担を少なくする検討を始めることになります。

今回は、筆者のベタな事例をご紹介しましたが、この負担増額月5万円!これが、今年度の制度改正における国の姿勢、国民の負担を増やすことの象徴的な事例であるとも感じました。

まとめ

・介護サービスの費用は所得額によって異なります
・施設サービスの負担限度額の適用も収入と資産額によって異なります
・介護サービスを利用されているなら、まず年間所得と預貯金額を把握し、役所に確認してみましょう

 

ようこそ!当ブログへお越しいただきありがとうございます。ここ「アシタの福祉」では、現状、何かと課題感の多い、介護や障害、保育等の福祉に係るテーマについて、制度のウラオモテから斬る視点で「あした」を語りたいです。

プロフィール:介護福祉コンサルタントとして13年、介護関連著書2冊

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